青山円形劇場でイキウメ「太陽」を観た。傑作である。脚本はもちろん前川知大氏。そしてさらに言うまでもないがSF。バイオテロで拡散したウイルスにより、人口は激減。奇跡的に回復した感染者はノクスと呼ばれ、頭脳明晰で若く健康な身体を維持できるように変異するが、太陽光の下では活動できない。かつて日本と呼ばれた列島にはノクス自治区が点在し、人間のまま生き抜こうとする少数の者たちは四国へと移住するが、故郷を捨てずに生きるものたちもいた。「太陽」はそんな故郷に残る人間とノクスとの関わりあいをエピソードとしながら、生きざまと死にざまが描かれる(生き方と死に方ではない。死とは心臓や脳が停止することだけではない)。
人間の生き残りである男がノクスに言う「キミらに夜明けはないものな」。「僕らには月がある」「知ってるか?月の光は太陽の反射なんだ」。1970年、大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」であった。小学生だった私はアメリカ館で月の石を見た。星はどれもみんな石なの?そうなんだ・・・とがっかりしたものだ。進歩とは夜が明けることだ。進化が進歩ではないこともあるのだ。
(ネタバレは避けました)
http://www.ikiume.jp/index.html