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あじさいの花の下で


あなたの好きな 小雨に濡れてる
あじさいの花

過ぎた日のあなたの愛を
たぐり寄せて

花びらをむしりとって
私の中のあなたに

投げつけたいの
投げつけたい

(あじさいの花の下で/佐藤公彦)



この歌の「あなたの好きな」は、雨なのか、紫陽花なのか。「花びらをむしりとって投げつけたい」で、紫陽花だとわかる。忘れたくても忘れることのできない、心にずっーと住んでいる人。愛しくて、切なくて、その人の好きなものをわしづかみにして投げつけて、いっそもう一度嫌われてしまいたい衝動。そんなところだろうか。心から出て行って!と、泣きながら花を投げる。投げるものが花。その人の好きな花。なんとも胸のつまる歌。

紫陽花を見に鎌倉に行った。たくさんの様々な紫陽花を夢中で撮っていると、目の前に昔大好きだったフォトグラファーが立っていた。「大好きな」と言ってもそれは、恋愛ではなく、彼の作品に取り組む真摯で紳士な姿勢と、穏やかな笑顔だった。紫色の背景が赤に転んでしまうことを、共に嘆いた人。奇遇にも今、美しい紫色の花にお互いカメラを向けている。声をかけると、さっき私の声を聞いたと言う。声の方を見たが、そこには違う人がいた、と。「でもやっぱりいた!ひさしぶりですね!」。

過去と今と未来がひとつになったような瞬間。嬉しくて嬉しくて、私は自分のカメラを渡した。そして、私(と友達)を撮ってもらった。私のカメラは彼の大きな手の中ではとても小さくて、それがなんだかくすぐったかった。

作品を持つ人に抱く、恋にも似た想い。
いくつもいくつも、いつになっても、いつまでも。
紫陽花はそんな想いの固まりのように思える。

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