
イキウメ「獣の柱」東京公演千秋楽。とうとう今日が最後となった。イキウメ=前川知大作品の大ファンであるが、同じ公演を3回も観たのは今回が始めてだ。
千秋楽はファンにとってもフィナーレを観ずしてなんぼのもん?な気持ちで必須として、二回目はなぜかと問われれば、初回の疑問点検証のため。
幸いにも前川氏とは個人的に話すこともできるので、初回の観劇後とその翌日ラファエロ展にご一緒して連続2日、質問やら疑問をぶつけさせていただけた。ゆえに2回目はどこの誰より楽しめた贅沢モンである。
贅沢モンといえば、我が息子。高校生から演劇に携わり思えばもう8年。脚本を書き始めて(たぶん)5年。前川氏に作品を観ていただける恐悦至極の男である。息子の目は結構鋭いと前川氏に言っていただき、創造した者としても誉れである。息子とゆっくり話す時間があまりない中、イキウメ=前川知大作品についてだけは別。時間を作って感想を語り合う。互いの感性の共通点や相違点を認識できる深く豊かな時間だ。大窪君のセリフである「調和」のひととき。「胎児のような、安らかな、幸せの時間」である。
「一度否定したものを取り戻そうとするのは正しいことだと思えないんです」
息子の誕生日である今日、ひとり、安井さんのセリフを心で聴く。あれもこれも取り戻そうとしなかった母につきあい26年。ありがとうとおめでとうを息子に。そして、母からもらえた一番嬉しい贈り物は、6月2日に君を誕生させたことではないですか?と。
なぜなら前川氏の誕生日は一日違いの昨日、6月1日。
物語は必ずしもエピソード1から始まらない。時代は違えど前川氏のすぐ後を追って誕生してきたあの日、今日のエピソードが、すでに時の彼方で綴られていたのだ。
あぁ、なんてお祝いにふさわしいSFであろう。
今宵は夜空が宇宙に見える。
(現在の私と息子の「へその緒」は前川知大作品である、という話でした)